最高裁判所第三小法廷 昭和35年(あ)2517号 決定 1961年3月14日
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
被告人本人の上告趣意について。
所論は、事実誤認、第一審における単なる訴訟法違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない(公判調書の記載が明白な誤記である場合には、公判調書は正しい内容にしたがって証明力を有するものと解すべきであるから、第一審の訴訟手続には所論のような判決に影響を及ぼすべき法令違反は存しない)。
弁護人進藤誉造の上告趣意について。
所論第一点は、事実誤認、単なる法令違反と論旨引用の高等裁判所及び当裁判所の判例違反を主張する。しかし、引用の各判例はいずれも本件に適切でなく、論旨は原審のいかなる判断が引用の判例と相反する判断をしたと主張するのか明らかでないので所論は理由がない。その他の主張は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
所論第二点は、訴訟法違反と論旨引用の高等裁判所判例違反を主張する。しかし、公判調書の記載が明白な誤記である場合には公判調書は正しい内容にしたがって証明力を有するものとする原審判断は正当である。引用の判例は立会検察官が何人であるかが判明しない場合に関するものであって本件と事案を異にし適切でないので論旨は理由がない。
所論第三点は、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)